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家に棲むもの <小林泰三>



総合評価     ★★★★★

ストーリー    ★★★★☆
表現/世界観    ★★★★★
キャラ       ★☆☆☆☆

ハッピーエンド △




内容:

 ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞える。食事ももう一人分、余計に必要になる。昔、この家は殺人のあった家だった。何者が…。不思議で奇妙な出来事が、普通の世界の狭間で生まれる。ホラー短編の名手、小林泰三の描く、謎と恐怖がぞーっと残る作品集。



感想

 久々に本を読みましたので、感想を書きたいと思います。
 今回読んだのはホラーです。
 知人に「小林泰三さん」をおすすめされ、まずはこの一冊を手に取りました。

 えー、表現力が抜群に高いと感じました。
 この本には、表題作を含め7作の短編小説が入っていますが、そのどれもが、グロかったり、エグかったり、汚かったり、入り組んでいたりします。

 いわゆる幽霊や不可解なもの、不気味なものに対する恐怖ではなく、人間そのものの気持ち悪さに対する恐怖を抱く感覚が強い内容となっています。
 これを読んで、人間のエゴに対して、みな何かしら考えたりすることでしょう。

 執着、生きるために殺すということ、精神、遺伝子、思い込み、魔法、そして…狂気。

 「五人目の告白」「森の中の少女」「お祖父ちゃんの家」この3つは、展開も上手くて、徐々に真相が明らかになる快感がありました。
 読んでいてとても楽しかった。

 次は、「脳髄工場」か「玩具修理者」のどちらかを読むと思います。
 ホラーだけではなく、SFも書いているようなので、そちらもいずれ読みます。
 とても楽しみです。




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水底から君を呼ぶ <大石圭>

 不本意ながら先月末でネット回線を解約した。
 しばらく更新していなかったが、これからは携帯から記事を上げていきます。

 Amazonのリンクは貼れませんが、気になる本があれば検索してみて下さい。

<あらすじ>
 真夜中のプールに忍び込み戯れる四人の美女。ふと気付くと、一人が忽然と姿を消していた!水面に浮かぶ大輪の白い花……。そして、残りの三人にも何者かの魔手が忍び寄る。二人めはニューカレドニアの海でダイビング中に消えて―――。新妻を喪った男が知った、女たちが共有する冥く忌まわしい秘密とは?
 人の心の奥底に巣くう深い闇と切ない愛を描く、戦慄の物語。

<評価> 総合 ★★★★☆
世界観 ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
キャラクター ★★☆☆☆

<感想>
 美しい。

 フィリピンやニューカレドニアなどの常夏の楽園を舞台にしていて、主人公は海に潜るダイビングが趣味である。
 海に行ったことが殆どない私でも、何故か想像出来てしまう景色や雰囲気や世界観が、大石圭さんの巧みな文章を通して淀みなく伝わってくる。
 綺麗な海に潜った時の感動や、はいた息が気泡になってぶくぶくと海面へ浮上していく様や、色とりどりの魚や海草や珊瑚が、まるですぐそこにあるかのように。
 文字を読んでいるだけなのに、まるで本当に旅行をしているかように、なんだかわくわくしてくる。

 物語は、主人公と、とある女性で視点が入れ替わりながら進んでいく。

 まずは主人公サイドで起きる事件の不可解さと、南国の世界観に夢中になる。
 それから、徐々に明るみになる、ある女性の人生が悲壮すぎて切なくなる。
 段々と二つの視点が混じりあい、真相が見えてきて、人間の醜さと、反対の美しさに胸を打たれる。
 そして少し無理矢理だが、ラストの粋な演出で物語がしまる。

 大石圭さんの本は何冊か読んだが、こんなに綺麗な内容のものは、たぶんこの話だけだろう。
 アンダーユアベッドという小説もかなり好きだが(主人公はアロワナなどの高級魚を売る地味な男性)、割りと軽めの内容なそれと比べてもこの話は群を抜いて明るい。

 なぜならば、大石圭さんの書く小説に出てくる女性は大抵ひどい。
 なにが酷いかというと、扱われかたがほぼ奴隷といった感じ。
 読者の女性が思わず男を嫌いになりかけるくらい、小説の女を徹底的に拷問にかけている。

 この話も例外ではない。
 ただ、他の本と違うのは、確かに酷い扱われかたはするが、それが過去だということ。
 なので、読者としては気が楽なほうと私は評価する。

 物語としては、意外性はないし、際立って面白い見所もない。
 ただ、何回も読みたくなる中毒性があって、ホラーなのに何故か癒され、心が落ち着くような物語なのだ。

 多分それは、海、深い青、美しい空、南国にしか咲かない花などが想像させる色彩がもたらす効果だと思う。

 この本は私の本棚から生涯出ていくことはないだろう傑作。
 是非皆様にもおすすめしたい。

夏と花火と私の死体 <乙一>





総合評価     ★★★★☆

ストーリー    ★★★★☆
表現/世界観    ★★☆☆☆
キャラ       ★★☆☆☆

映画化 ×
ハッピーエンド ×



内容(amazonより抜粋)

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。




感想

 表題作に続き、「優子」という作品からなる文庫本。

 内容に触れる前に、まず、小野不由美さんの解説を絶賛したい。読んでいて、うんうん、その通りと思わず頷いてしまった。乙一の作品にはなんというか、乙一がいない。キャラクターはキャラクターとして存在している。物語の進展にブレがない、迷いがない。だからどの作品を読んでも、あっさり風味である。でも、それこそが乙一の個性だと思うわけです。物語を作るためだけに生まれてきた作家、という印象。文によって宗教だとか世界観だとかキャラクターの魅力だとか、そういった飾り物を伝えようとしているわけではなく、ただ物語の完成度に重きを置いているという感じ。でもそれがどれだけ難しいことか。物語にいっさい飾りを入れずに評価される人なんて、そうそういないのではないか。特に、私自身が、世界観やキャラクターが個性的であればあるほど心酔する傾向にあるにも関わらず、乙一はそれらを全部とっぱらっちゃって納得させてしまうのだからすごい。多分この人は、飛び抜けて客観性に優れる視野を持っているのだと思う。ほんとに、すごいな…。私には、絶対に書けない小説であるからこそ、うらやましく思う。

 夏花は、乙一デビュー作のため、執筆時は十六歳。まだ、同じような表現を繰り返す稚拙さがある。でもそれがこの作品の味になっているのではないかと思う。

 主人公の五月は序盤であっけなく死ぬ。それから常に五月の視点で物語が進むのだが、もちろん死体は動けない。それなのに何故か五月の目に届かない場所で起こっていることまで細かく描写する。普通ならば、その部屋にいる人物で一人称語りにするか、三人称語りにするはずだが、それはしない。その不思議な技術を小野不由美は解説でこう語っている。「五月は死んだ時点で神になったのだ」。ああ、納得。

 優子という作品は、読む人によっては少し分かりづらい内容になってしまう印象。ただ、ベテランの作家たちが乙一の才能を測るにあたって、必要な作品だったのだろう。連想させる情景を最小限の単語で済ませられるという恐ろしい才能を発揮しているし、言い回しが上手くて驚くのだけれど、それだけ。つまらなくもないし、おもしろくもない。平坦な作品。乙一の練習に消化されたなぁ。

 というわけで、乙一の才能はもうこの時点で花開いている。自分のやりたいことを文字で操る技術を持っている。当時の若さで!ここから次々に作品が発表されていくのだが、それらを読み進めていけばいくほど、乙一すげぇと言ってしまいたくなる。

 この本に載っている作品二つは、確かに秀逸ではある。が、本棚に並べる価値があるかというと、どうだろう。少なくとも私は置かない。私は、乙一の本領は、白で発揮されると思っている。 ※乙一の作風は、残虐系の黒、切ない系の白に分けられる。最近はそれらが入り交じる灰乙一になりつつあるようだ。

 と、いうわけで、早く白乙一が読みたい。とくに、幸せは子猫のかたちとか、暗いところで待ち合わせとか、きみにしか聞こえないとかそのあたり。昔に読んだときには心底感動した。再読してみてその感動が失われていなければ、本棚にそれらを並べたいと思う、もちろん、新品で。


天帝妖弧 <乙一>




総合評価     ★★★★☆

ストーリー    ★★★★☆
表現/世界観    ★★★☆☆
キャラ       ★☆☆☆☆

映画化 ×
ハッピーエンド ×



内容(amazonより抜粋)

 とある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木。彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せなかったが、助けてくれた純朴な少女・杏子とだけは心を通わせるようになる。しかし、そんな夜木を凶暴な事件が襲い、ついにその呪われた素顔を暴かれる時が…。表題作ほか、学校のトイレの落書きが引き起こす恐怖を描く「A MASKED BALL」を収録。ホラー界の大型新人・乙一待望の第二作品集。




感想

 いやはや、すごい。

 乙一さんの小説にハマって読み漁ったのはいつの頃だったか。記憶に薄いので大分前のことだと思う。
 好きな作品で記憶にあるものは、「幸せは子猫のかたち」「傷~Kiz~」「GOTH」「Calling you」など。
 うろ覚えなので、正しい表記ではないかも知れない。のちに再読したとき、また編集する。
 加えて、盲目の女性の部屋に、一人の男性が隠れるという話も大好きだった。
 乙一の作品は短編ばかりなのだが、一つ一つの作品の設定が面白い。
 例えば、想像の電話が鳴り出す、他人の傷を肩代わりできる子供、幽霊と同居など。発想が斬新なのに、舞台は身近な学校や家庭であるところが魅力の一つだと思う。

 話は変わるが、私はその昔、漫画家を目指していた。
 プロットを組み、ネームを書き、下書きをし、ペン入れをする例のヤツ。
 なので、話をつくることの難しさを少しだけ知っている。
 私が逆立ちしても発想できないような設定ばかりで驚かせてくれるのが乙一の作品。
 新しい作品を手に取り、がっかりしたことは一度もない。
 デビューは、十六・十七歳だという。背筋が寒くなるほどの才能を持っている。

 私の中の天才は、三人。椎名林檎と、冨樫義弘と、乙一。
 好きな作家はたくさんいるが、天才だと思うのは乙一だけ。とはいえ、私はまだ読書家としてはひよっこなので、このさき意見を覆す可能性はある。

 さてさて、この「A MASKED BALL -及びトイレのタバコさんの出現と消失ー」という作品について。
 喫煙中毒者の高校生が落ち着けるトイレを見つけるところから始まる。序盤のテンポがすさまじく軽快。
 トイレという空間の中、顔も知らない匿名さんたちとの落書きを通した会話が始まる。
 序盤は行間が多く、読みやすくなっている。そして余計な説明が一切ない。
 必要最低限の描写しかされないが、身近な学校が舞台であることによって、空白な部分を自動的に想像が補ってくれて、説明不足を感じることはなかった。
 短編の魅力は、こういうところだと思う。読んでいてうんざりするような、難解な解説などがない。
 長編小説を読んでいると、公的文書か!と思うこともしばしば。
 ラストはちょっぴり拍子抜けだけれど、落書きをしていた人の正体がわかるとき、にやりとしてしまう。ピアノがゴリラに豹変するときも、にやりとしてしまう。

 表題作の、天帝妖弧は素晴らしい。
 主人公が、一人の少女に向けた手紙から物語が始まり、その少女から見た視点と切り替わり、それらが交互に展開する。
 主人公を化け物に変えてしまった存在との会話も面白いし、少女と主人公のすれ違い、思い、生まれたものなんかをラストのほうで感じたとき、とてつもない感動におそわれた。私は泣いた。
 ありえない境遇の中に、ありえる心情。うまいなぁ、と思った。
 当然なのだけれど、文章もとても上手い。心理描写が細かくされているおかげで、主人公の性格も、杏子の性格もすごくよく伝わってくる。二人とも、違う理由で寂しい。決して交われない寂しさが、ひとときだけいっしょになったことによって、お互いにかけがえのない思い出をもたらした。

 一つだけ短所をあげるとするならば、話はものすごく上手いし、感動もできるし、人にすすめるのに最適な本ではあるけれど、誰かのバイブルになるかというと、そういうカリスマ性は持っていないように思う。
 乙一は長編に向かぬ作家という印象は、ある。

 という理由から、総合評価は星四つとなっている。






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ハッピーエンド至上主義者。
過程がどれほど素晴らしかろうとも、バッドエンドで評価が一転します。


★の数は、その本の価値と同一ではありません。
たいてい、難解な哲学を含むものは、星の数が少ないです。

あなたが本を手に取るきっかけに、人の意見が知りたい人にとっての参考に、このブログが役立ってくれますように。

PN:伊吹かなめ
傾向:世界観、キャラクター、読みやすさ、印象の強さ、独創性、個性などを重視します。エンターテイメント性に富んだものを好みます。俗っぽいものに抵抗あり。



文字、紙、本に溺愛。作家さん、編集者さん、そして出版関係の皆様に感謝と敬意をここに記します。本を生み出してくれて、ありがとう。
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