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月の影 影の海(下) 十二国記 <小野不由美>




総合評価     ★★★★★

ストーリー    ★★★★★
表現/世界観    ★★★★★
キャラ       ★★★★☆

映画化 × アニメ化されている
ハッピーエンド ○



内容(amazonより抜粋)

「私を、異界へ喚んだのは、誰?」海に映る美しい月影をぬけ、ここへ連れてこられた陽子に、妖魔は容赦なく襲いかかり、人もまた、陽子を裏切る。試練に身も心も傷つく陽子を救ったのは、信じることを教えてくれた「ただひとり」の友―楽俊。ひとりぼっちの旅は、ふたりになった。しかし、“なぜ、陽子が異界へ喚ばれたのか?なぜ、命を狙われるのか?”その真相が明かされたとき、陽子は、とてつもない決断を迫られる。




感想

 過酷な状況と、辛辣な孤独を戦い抜いて、陽子はやっと信頼に足る人物、いや、半獣、いや、ネズミと出会う。今までの経験から、自分以外のなにをも信じられなくなっており、ネズミを利用するはらで一緒にいたが、町に入る前に(正確には町ではなく、里やら盧やらよくわからん名称)妖魔に襲われ、助けるか逃げるか迷い、ついには逃げた。葛藤の中、ネズミを殺すことまで考えた陽子だが、それはしなかった。その、現代の常識と、異世界での安全での狭間で揺れる主人公から、いやもう、目が離せない。

 このネズミが、内容にある「楽俊」という友だ。この半獣も、なんともかわいい。

 ここまでが中盤の内容で、後半からはもっと目が離せなくなる。予想外な事実が明らかになる。というのは、私自身、物語を読むときに予想をしないので。予想をして読んでいて、それが当たる人には物語がどう映るのかはわからない。もし、なんとはなしに先が読めてしまっていたなら、面白さは半減するかも知れない。

 この本でたった一つ、不満があるとすれば。それは楽俊のくだり。仕事はもらえないというが、なんとかなるんじゃないの、それって、と思ったくらいか。それ以外にはない。

 こんなに面白い小説に出会ったのは、本当に久しぶりだと思う。

 amazonでの評価が高いのも、人からおすすめされるのも、十回くらい首肯して納得できる。

 やっぱり私は、面白い物語は深さだと思う。段取りも大事だが、深ければ深いほど、読者を魅了する。世界観が練りに練られていて、それが確固とした存在であればあるこそ、納得できて、色をつけたくなる。

 私の原点になってくれる本に出会ったと確信する。


 続刊を読むのが楽しみだ。
 楽しみなので、しばらくは手に取らない。
 絶対に面白いものは、あとに残しておくに限る。
 そしていつか私の本棚にこれらを並べる。並べて、一生を共にする。

 私も、私の世界観を解き放つ作家になれるよう、頑張ろう。そう思える本だ。







月の影 影の海(上) 十二国記 <小野不由美>




総合評価     ★★★★★

ストーリー    ★★★★★
表現/世界観    ★★★★★
キャラ       ★★☆☆☆

映画化 × アニメ化されている
ハッピーエンド ○



内容(amazonより抜粋)

「あなたは私の主、お迎えにまいりました」学校に、ケイキと名のる男が突然、現われて、陽子を連れ去った。海に映る月の光をくぐりぬけ、辿りついたところは、地図にない国。そして、ここで陽子を待ちうけていたのは、のどかな風景とは裏腹に、闇から躍りでる異形の獣たちとの戦いだった。「なぜ、あたしをここへ連れてきたの?」陽子を異界へ喚んだのは誰なのか?帰るあてもない陽子の孤独な旅が、いま始まる。




感想

 下巻まで一気に読み終えてしまって、ただいまものすごく興奮状態にある。
 とにかく面白くて、目が離せなかった。ただ、とてつもなく面白くなるのは下巻から。
 下巻は最初のページを開いてから、右手にもっているページの束と左手に持っているページの束が同じになるくらい(つまり中盤)まで、読む勢いを失わなかった。我に返ったとき、いつの間にかそこまで進んでいた。

 上巻に限っては、そこまでではない。
 なにせファンタジーなので、異世界に入ってからは、主人公同様、読み手のこちらも手探りだ。ゲームなどと同様、「ハマる」のには時間がかかる。

 この作品はが、刊行されたのは1992年とのこと(!)
 ――――――なんと20年も前!!

 読み終わってからそれを知って、納得する部分がある。
 序盤は、主人公の陽子が現世界で暮らしているところからはじまり、わけもわからず異世界に飛ばされる過程が語られている。その、現世界の暮らしは、私たちが想像できる範囲の一般家庭の様子なのだが、しょうしょう、男尊女卑や、古くさいいじめの表現などがある。
 2012年の今に読むと、すこし違和感がある。

 とはいえ、20年経とうが高校生の暮らしぶりに大差ない。安全圏であんのんと生活していた子供が、異世界に飛ばされて命からがらサバイバルすることになる展開で、その環境の落差に、ひきこまれる。

 日本での暮らしで、優等生の地位を守ってきて、目立つ行動はしてこなかった陽子。周りの人間に合わせ、善良につとめてきた。きっと多くの人が陽子と同じように暮らしているのだと思う。それに、疑問をもっていても、そうするしかない。日本で生きていくためには、それが当然なのだから。
 人と生きていくためには、裏切りや殺人や、仲違いにつながることは禁止されている。法律でも禁止されているし、人と違った行動を起こせば、迫害される。
 そういうルールが染みついてきた高校生が、そのルールがまったく効かない異世界に放り出される。
 生きていくためにどうするべきか、人に裏切られるごとに学び、ルールから解き放たれていき、まるで野生にかえるかのように変貌していく陽子が、すごく気持ちいい。

 序盤の頼りない陽子から、終盤の研ぎ澄まされた陽子に、だんだんと変わっていくその様子が、一冊の本で描かれている。これが、「十二国記 月の影 影の海」の上巻である。



 「月の影 影の海 十二国記 下巻」に続く。






武器よさらば(下)  <アーネストヘミングウェイ (著) 金原瑞人 (翻訳) >




総合評価     ☆☆☆☆☆

ストーリー    ☆☆☆☆☆
表現/世界観    ★☆☆☆☆
キャラ       ☆☆☆☆☆

映画化 ○
ハッピーエンド ×



内容(amazonより抜粋)

傷が癒え、再び前線へと戻るフレデリック。しかし戦況は厳しく、イタリア軍は敗走を余儀なくされる。フレデリックは戦線を離脱し、命がけでキャサリンのもとへ帰り着く。結婚を誓い、スイスへ脱出する二人。だが、戦場の中で燃え上がった愛の結末は、あまりにも悲劇的なものだった。




感想

 上巻を読み終わってから、下巻に移り、それを読み終えるまでに五日かかった。

 げろげろげろげろ。
 読み終わった今、吐き気が止まらない。

 救いがない。救いがない上に楽しみもない。
 これは多分、訳されているからだと思う。原文で読めば、楽しいんだろうな。なんというか、訳されていることで、わざとらしくなってしまっているというか。特に会話が。
 文化が違う異国の話を日本語に直してしまうと、読んでてちょっとしらけるのだ。やっぱり「文学」というからには、原文で読むべきだと改めて思った。なんていうか、訳者の「いいだろう、この言い回しとか最高だろう」みたいな押しつけを感じてしまうというか。
 ロリータもそうだったけど、訳者っていうのはその本のファンみたいなものだから、どうしても鼻についちゃうんだよね。訳せるということは知識があるということで、知識もなく読んでしまうと、読み手としては情けなくなるというか。
 ま、これは完全に言いがかりなので、とうぜん訳者は悪くない。

 しかし、ダメだ。これは予想以上にダメ。私には合わない。文体はものすごくいい。これで世界の美しさを語り尽くして欲しいところ。ああ、これに比べればロリータは最高だったな。読みやすくて、何かの魅力について語っていて、バッドエンドじゃない文学小説は存在しないのかね?
 ストーリーが本当にだめ。まだ文学小説をかじった程度だけれど、日本人は自殺で、外国人は病死や戦死なのかな。もうすでに満腹気味で、飽き飽きしてきてしまう。文学が好きな人って、どういう精神状態をしているんだろう? 私には理解ができない。理解ができないぞ。

 文章をまとめようという気も起こらないぐらいに気分が悪い。
 この鬱憤を晴らしたくてたまらない。それでこんなめちゃめちゃな記事になってしまっている。

 ああ、もう!

 勉強のためだ。勉強にはなった。読んで損はなかった。
 でも私はこういう絶望的な小説が一番、嫌い。現実だけでお腹いっぱい。もう、嫌だな、本当に。

 太宰治の人間失格よりは、優しいけれども。
 ああ、それでも、バッドエンドは大嫌い。

 映画のLEONを見終わったときと同じモヤつきを感じる。

 しばらくは純文学から離れることにする。待ってろよ、ハッピーエンド!!




武器よさらば(上)  <アーネストヘミングウェイ (著) 金原瑞人 (翻訳) >




総合評価     ★★☆☆☆

ストーリー    ☆☆☆☆☆
表現/世界観    ★★☆☆☆
キャラ       ★☆☆☆☆

映画化 ○
ハッピーエンド ?



内容(amazonより抜粋)

第一次世界大戦の北イタリア戦線。負傷兵運搬の任務に志願したアメリカの青年フレデリック・ヘンリーは、看護婦のキャサリン・バークリと出会う。初めは遊びのつもりだったフレデリック。しかし負傷して送られた病院で彼女と再会、二人は次第に深く愛し合っていくのだった…。




感想

 読みやすい。戦争物にしては描写があっさり。どろどろとした人間関係や、死についてぐだぐだ心情を述べるなどの描写がない。主人公の視点から、見たものや、周りのやつが喋っていたこと、食べたもの、飲んだものなどが淡々と綴られているのみ。

 カバーはシンプルで、可もなく不可もない。ページを開くと、フォントが大きめで、行間も広いので、ぱっと見、子供向けといった印象を受ける。実際に難しい単語や比喩表現などが出てこないので、小中学生が読むのに適しているように思う。

 世界第一次大戦の物語であるらしい。上巻をすべて読み終わったところでわかったのは、ヘミングウェイの文体は、すごく単調であること。ワインが好きなのであろうということ。それくらいで、主人公が何人なのかまったくわからなかった。アメリカ人なのか、イギリス人なのか、イタリア人なのかさっぱりだ。
 舞台はイタリアのようだ。途中からミラノに移動して、ヒロインのキャサリンとべたべたしている。
 登場人物たちは、イタリア語と英語を使い分けている様子。だが、誰がどっちを話せるのか、どこでそれが切り替わっているのかさっぱり分からない。と、いうのも私がこの本に特別な興味を抱いていないからだと思う。

 とにかくキャサリンの台詞が鬱陶しい。わざとらしい感じがする。多分、ぶりっこを見ているときのあの冷めた感情と同じようなもの。主人公の切り替えも鬱陶しい。最初はゲームだと言っていたのに、ミラノで会った途端いきなりキャサリンを愛し始める展開の意味がわからない。心理描写がないのだから、いきなりに感じて当然なのだが、想像しろと言われても無理なほどに、突然、主人公の気持ちが変わるから、私はついていけなかった。

文は読みやすい。さらっとしている。そこは長所であるように思う。でも、中身がない。下巻を読んでどう思うかわからないが、私の評価は変わらないように思う。リナルディがすこし可愛くて好きなので、★は二つつけた。



「武器よさらば 下巻」に続く。




夏と花火と私の死体 <乙一>





総合評価     ★★★★☆

ストーリー    ★★★★☆
表現/世界観    ★★☆☆☆
キャラ       ★★☆☆☆

映画化 ×
ハッピーエンド ×



内容(amazonより抜粋)

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく―。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作、文庫化なる。第六回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞受賞作。




感想

 表題作に続き、「優子」という作品からなる文庫本。

 内容に触れる前に、まず、小野不由美さんの解説を絶賛したい。読んでいて、うんうん、その通りと思わず頷いてしまった。乙一の作品にはなんというか、乙一がいない。キャラクターはキャラクターとして存在している。物語の進展にブレがない、迷いがない。だからどの作品を読んでも、あっさり風味である。でも、それこそが乙一の個性だと思うわけです。物語を作るためだけに生まれてきた作家、という印象。文によって宗教だとか世界観だとかキャラクターの魅力だとか、そういった飾り物を伝えようとしているわけではなく、ただ物語の完成度に重きを置いているという感じ。でもそれがどれだけ難しいことか。物語にいっさい飾りを入れずに評価される人なんて、そうそういないのではないか。特に、私自身が、世界観やキャラクターが個性的であればあるほど心酔する傾向にあるにも関わらず、乙一はそれらを全部とっぱらっちゃって納得させてしまうのだからすごい。多分この人は、飛び抜けて客観性に優れる視野を持っているのだと思う。ほんとに、すごいな…。私には、絶対に書けない小説であるからこそ、うらやましく思う。

 夏花は、乙一デビュー作のため、執筆時は十六歳。まだ、同じような表現を繰り返す稚拙さがある。でもそれがこの作品の味になっているのではないかと思う。

 主人公の五月は序盤であっけなく死ぬ。それから常に五月の視点で物語が進むのだが、もちろん死体は動けない。それなのに何故か五月の目に届かない場所で起こっていることまで細かく描写する。普通ならば、その部屋にいる人物で一人称語りにするか、三人称語りにするはずだが、それはしない。その不思議な技術を小野不由美は解説でこう語っている。「五月は死んだ時点で神になったのだ」。ああ、納得。

 優子という作品は、読む人によっては少し分かりづらい内容になってしまう印象。ただ、ベテランの作家たちが乙一の才能を測るにあたって、必要な作品だったのだろう。連想させる情景を最小限の単語で済ませられるという恐ろしい才能を発揮しているし、言い回しが上手くて驚くのだけれど、それだけ。つまらなくもないし、おもしろくもない。平坦な作品。乙一の練習に消化されたなぁ。

 というわけで、乙一の才能はもうこの時点で花開いている。自分のやりたいことを文字で操る技術を持っている。当時の若さで!ここから次々に作品が発表されていくのだが、それらを読み進めていけばいくほど、乙一すげぇと言ってしまいたくなる。

 この本に載っている作品二つは、確かに秀逸ではある。が、本棚に並べる価値があるかというと、どうだろう。少なくとも私は置かない。私は、乙一の本領は、白で発揮されると思っている。 ※乙一の作風は、残虐系の黒、切ない系の白に分けられる。最近はそれらが入り交じる灰乙一になりつつあるようだ。

 と、いうわけで、早く白乙一が読みたい。とくに、幸せは子猫のかたちとか、暗いところで待ち合わせとか、きみにしか聞こえないとかそのあたり。昔に読んだときには心底感動した。再読してみてその感動が失われていなければ、本棚にそれらを並べたいと思う、もちろん、新品で。


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ハッピーエンド至上主義者。
過程がどれほど素晴らしかろうとも、バッドエンドで評価が一転します。


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たいてい、難解な哲学を含むものは、星の数が少ないです。

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PN:伊吹かなめ
傾向:世界観、キャラクター、読みやすさ、印象の強さ、独創性、個性などを重視します。エンターテイメント性に富んだものを好みます。俗っぽいものに抵抗あり。



文字、紙、本に溺愛。作家さん、編集者さん、そして出版関係の皆様に感謝と敬意をここに記します。本を生み出してくれて、ありがとう。
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